かの少年は、この新撰組隊士フィギュアを”コンプリート”(すべて揃えること)するのを目指しているそうだった。
「すごいねぇ…」
日野宿交流館の女性スタッフ(中年女性)もおどろき、フィギュアをコンプリートしてくれるなら少年といえども「上客」である。
「高幡不動さまはもう行った?土方さんの銅像のある…」
などと商売を忘れて少年に話しかけている。後ろに並んでいる私としては早くして欲しいところなのだが…。
たしか、この日野宿交流館の向かいにある本陣の建物の中に昔、美味しい蕎麦屋があって、新撰組にはまっていた中学生の私は二度ほど、母に連れられて手打ち蕎麦を食べに来た思い出がある。その蕎麦屋もたしか、新撰組隊士とゆかりのある店だったはずだ。
いま、目の前にいる見知らぬ少年と母の姿が、当時の自分と母の姿と重なり、私がどこか感傷的な気持ちにさせられたことはたしかだった。