が、レストランはその日はなぜか臨時休業、鮎の塩焼きも五人づれの家族がベンチを独占していて食べられなかった。昼飯どきを完全に過ぎてしまい、私はとにかく何か口にしたかった。
(ニューサンピア埼玉おごせに、何か食べられる店があるんじゃないか…?)
かの、バスが途中で止まってしまう、日帰り温泉施設だ。そのバスなら今から十分後に来る。
急いで調べると、十四時ラストオーダー、十四時半終了のレストランが一軒だけ、温泉施設の中に存在した。いまは既に十三時半を過ぎている。もし間に合わなかったら、私は空腹をこらえたまま二時間弱、興味がない温泉施設で時間を潰さなくてはならない。
私は賭けをする心境でバスに乗った。埼玉の山道をゆっくりすすむバスに、私の心は冷や冷やさせられることしきりであった。
終点「ニューサンピア埼玉越生」に着いて、いそいで時間を確認すると、十四時の十分前だった。
(よかった…何とか間に合ったな…)
温泉施設の二階にそのレストランはあるそうで、階段を駆け上がってゆくと…。