日常の出来事

若山牧水歌碑(立川駅前)

立川駅北口、二階のデッキから階段を下りた先の、喫煙所の前に、若山牧水の歌碑が立っている。駅前の喧騒の中、立ち止まってそれを見る人は少ない。

旅にて詠める「立川の 駅の古茶屋 さくら樹の もみぢのかげに 見送りし子よ」

当時、立川の駅前にあった古い茶店に牧水が立ち寄ったところ、茶店のそばの桜の木が紅葉に染まっていた。そのもみじの蔭で、茶店の子が牧水を見送ってくれた…という歌である。

その日私(筆者)は、『衝動殺人 息子よ』という日本の古い映画を観て、出演者の俳優・若山富三郎さんについて知りたいと思い、検索バーに「若山」と入れたら「若山牧水」の名がたまたま出てきた。(若山姓の著名人は少ない)

その時は無視してすぐに若山富三郎とすぐにクリックしてしまったが、その日の夕刻、立川駅前を歩いていてふと目にとまったのがこの碑だった。見ると、さきほど検索で出てきた若山牧水の歌碑ではないか…。何かに吸い寄せられたような、不思議な縁だった。

若山牧水は43歳で、急性胃腸炎と肝硬変で亡くなったので、死後、彼の歌を広める活動をしつづけたのは妻・喜志子夫人であった。この碑が立川市によって建てられたのも昭和25年(牧水の死後22年のち)のことだったため、碑文は夫人の筆によるものである。

歌碑は、人混みの絶えない駅の二階デッキの蔭で、今もなお、ひっそりとたたずんでいる。